バングラデシュの村へ最高の授業を届けたい

NPO法人 e-Education  代表 三輪開人

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――バングラデシュでは学歴による格差が大きいんですか?
 
三輪:大きいですね。進学率はどんどん改善されてきていて、小学校では97%ほど(※総就学率)ですが、そこからは下がる一方で、大学進学率は18%程度です。
 
 ただ、これは後でわかったことなんですが、実はバングラデシュでは大学に入りさえすれば、支援制度がすごく充実しているんです。もともと国立大学の学費は年間1万円以下ですし、貧困層の出身者は無償でドミトリーを利用できます。ご飯も出るので、入試に合格して国立大学に入ってしまえば、4年間大学で学んで卒業するのは、まったく難しくない。むしろ、トップの大学に通う学生は、アルバイトでかなりの収入が得られます。家庭教師や塾の講師をすれば、家族に仕送りをしても余裕のあるレベルまで稼げるんです。地方の農家より給料がいいですね。
 
――ということは、大学受験のために勉強にかけるお金がない、あるいは教育機会がないというところに課題があるのですね。そこに気がつかれて、e-Educationは中等教育支援に的を絞って、映像授業を始められたと。
 
三輪:アツと出会った翌日には、二人でダッカ大学という現地でいちばん有名な大学に行って、アンケートをとりました。東進モデルで教育支援をやりたいと話しながらも、私もアツも、現地の大学受験の制度や、予備校の実態など、そこまで調べられていなかったので、ダッカ大学に通っている大学生たちが、実際どういう受験生活を送ってきたのか、一度調べてみようと。
 
 また、このアンケートにはもうひとつ目的があって、それは現地で仲間を見つけることでした。きっと僕らがやろうとしていることに共感してくれる学生がいるはずだと思っていたので、アンケート項目の最後に、「僕らと一緒にやりたいですか?」という一言を入れていたんです。そうすると、やっぱり何人か丸をつけてくれた学生がいて、そこで見つけたのが、いまもパートナーとしてがんばってくれている、マヒンでした。
 
 彼は、ハンムチャーという農村の出身なんですが、1971年にバングラデシュが独立してから、私たちが出会った2010年までの39年間で、ハンムチャーからダッカ大学に合格したのは、マヒンひとりだけなんです。

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