娘が同じ葛藤を抱えることがない社会に

NPO法人ArrowArrow 代表理事 堀江由香里

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1、2時間だけ働ける即戦力の活用を
 
 もうひとつ、ArrowArrowが取り組んでいるのが、妊娠や出産を機に仕事を辞めてしまった女性の再就職を支援する「ママインターン」だ。
 
「現在、子育てを理由に退職した女性が、再び正社員として雇用される率は18%と言われています。一度正社員を辞めたら、8割以上がパートなど非正規雇用でしか働けないというのはおかしいのではないかと思っていて、いろいろな働き方を実現できないかということで、再就職支援に取り組んでいます」
 
 メインターゲットは「子育てが終わった女性」ではなく、「子育て真っ最中」の女性だ。
 
「託児施設も用意して、年次が小さいお子さんがいる方でも参加していただけるようにとやっているので、1歳から3歳くらいのお子さんがいる方が多いです。自治体と協働で取り組んでいるんですが、職住接近だとうまくいきやすいんですよね。雇う側も、働く側も、ハードルが下がりますから」
 
 まだ小さな子どもを抱えていると、いきなりフルタイムの勤務に戻るということは、雇う側、働く側ともに難しいが、短時間でもコミットできる人材を探している組織は意外と多い。だが、採用力が足りなかったり、アピールのしかたがわからなかったり、といったケースが多いため、ママインターンはそうした企業と個人のマッチングの場としても機能している。
 
「私自身、NPOを運営していて思うのですが、昼間ちょっと来てくれるだけでもいいから、『働いた経験のある人』というのは貴重な戦力なんです。学生ボランティアさんや学生インターンさんも来てくれるのですが、私たちのように遠隔で仕事をしていることが多いと、電話応対やメールの返信のしかたなど、一から教えてあげられる時間はあまりとれません。その点、社会人経験があると基本は身についていますから、即戦力になる。1~2時間でいいから人手が欲しい、というときも実は多いので、そうしたケースにママインターンはすごくマッチするんですよね」
 
 現在、ArrowArrowには、堀江さんを含め5名のスタッフがいるが、勤務時間などは相談の上、それぞれ個別に決めている。
 
「期限までに成果をあげてくれたら、いつ、どんなやり方をしてもいい、ということにしています。もちろんメリット・デメリットありますが、その日は2時間勤務にするとか、夜だけ仕事をするといったことを個人でコントロールできるので、子育て世代の多いうちのような組織にはしっくりくる組織体制だと感じています」
 
 スタッフはそれぞれプロジェクトごとにアサインされ、給与はプロジェクトごとに払われるようなかたちをとっている。
 
「とは言え、プロジェクトごとに切り分けることの難しいArrowArrowとしての広報や、成果の見えづらい仕事もあるので、それらについては『いつでもいいけど、プラス○時間コミットしてくださいね』といったかたちで業務を回しています」
 
 まだまだ試行錯誤している段階だと言うが、ArrowArrow自体が、子育てと仕事を両立できるフレキシブルな働き方のひとつのモデルと言えるのかもしれない。

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