女性のキャリアに自信を

NPO法人ArrowArrow 代表理事 堀江由香里

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ワーキングマザーの「漠然とした不安」を解消するプログラム
 
 「子育てしながら当たり前に働ける職場」をつくるために重要なのは、ステークホルダーを巻き込みながら働き方を見直していくことと同時に、産休・育休取得者本人にキャリアに対する自信をつけさせることだ。
 
「子どもをもった途端にキャリアのコースから外されたり、本人がキャリアに対する自信や意欲をなくしたりすることをマミートラックと呼んだりしますが、そうなってしまうことは個人にとっても組織にとっても望ましくありません」
 
 どうすれば、子どもをもつ女性がマミートラックに陥ることなく、キャリアを築いていけるか。会社からの提案を待つのではなく、自ら会社に「こういう働き方をしたい」「こういう仕事なら最大のパフォーマンスができる」といった提案ができる状態にもっていくため、「あなたが評価されているのはこの仕事の部分です」「あなたのこの部分が会社にとって価値があると言われています」と、会社からの評価ポイントを丁寧に伝えていくことが重要なのだという。
 
「また、彼女自身に数年先を見据えたキャリアプランを立ててもらう取り組みを行っています。産休・育休取得者第一号となるケースが多いので、本人も誰に相談したらいいかわからないし、育児でなにが起きるかわからないこともあって、半年とか1年とか、短いスパンでしかキャリアを考えられなかったりするんですが、3年とか5年のフェーズでキャリアがどういうふうに変化していく可能性があるのか、どういうところが重要になっていくのかといったことを伝えながら、長期的なキャリアプランを話し合っていきます」
 
 こうして3年間ArrowArrowの事業を行ってきた中で堀江さんが感じているのは、「彼女がいないと困る」「彼女の復帰のためなら、働き方を見直さなければいけないね」と言われる女性を増やしていかなければならないということだと言う。
 
「現在は、能力がないというより、能力がないと“思い込んでしまっている”女性社員があまりにも多いように感じています。いわゆる権利主張型の社員では困りますが、正当な権利として会社の制度を利用しながら、どうやって会社に貢献できるかを理路整然と伝えられる女性社員が増えていけば、会社のやる気をもっと促せると思っているんです」
 
 そのために行っているのが、ArrowArrowの2つめの事業である、「社員!Shine!」。女性の継続就労をサポートする研修プログラムだ。
 
「女性の管理職を増やしたいけれど、女性社員のモチベーションが高くないといった課題を感じている企業さんと、女性のモチベーションが上がる働き方を考えるセミナーを企画したりしています。働き続けたい女性を増やすために、会社としてはその女性に対してどんな働き方が提案できるか、といったことを一緒に考えるんです」
 
 結婚・出産といったライフイベントと仕事の両立に不安を感じている女性社員に向け、産休・育休の取得から復帰までの流れをイメージしてアクションプランを立てたり、子育てをしながら働いている女性をゲストに迎えた座談会を開いたりして、「漠然とした不安」の正体を探り、その不安を解消するための具体策を一緒に考えていく。ワーキングマザーのロールモデルを見せることで、子育てと仕事を両立できるという自信とイメージを膨らませていくことが狙いだ。

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