市民はもっといろんなことができる

京都地域創造基金 理事長 深尾昌峰

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地元経営者に叩き込まれたビジネスマインド
 
 当局から与えられた課題をクリアするため、京都コミュニティ放送局の設立にあたり、ラジオカフェ株式会社という会社がつくられた。この会社が社債の発行で資金をつくり、京都コミュニティ放送局から5年分の番組枠を買い、まとめ買いで安く提供された番組枠を再販することで得た利鞘で負債を返していく、というビジネスモデルで、京都コミュニティ放送局の初期設備と事業の継続性がセットされたのだ。
 
「このラジオ放送局の設立は、地域に根差して活動をしていく上でも、非常にいい勉強になりました。放送局は京都の三条にあるんですが、三条商店街を中心に地域で商売をされている方々はまちづくりの文脈から、僕らは市民性という文脈から、一緒に経営を考えていくわけです。そうすると、僕らは教えられることがとても多いんですよね」
 
 なにかやりたいことがあるとき、ビジネスをしている人々は、どうやって収益を得るかというところから入り、落としどころを見つけていく。一方で深尾さんたちNPOの人々は、思いを最優先に、やりたいことをやりたいようにやろうとする。
 
「市民性をベースに考えると、やりたいことをやるということは非常に大事なんですが、経営者の人たちは、それに持続性を持たせてかたちにするためにはどうすべきかということを、常に考えている。それは非常に勉強になりました。僕らはいきなり100%の力でやっていくのが正しいと思っていたんだけど、まずは50%の力でやってみて、そこでできた基盤を使って将来的に100に持って行く、というやり方を教えてもらえた。僕らのやり方だと、最初からマックスの力を出せるんだけど、次の年には50になっていたり、消えていたりする。『思い先行型』っていうのは、そういうことになりがちです」
 
 「やりたいことがあるんだったら、それが持続するようにまずは考えろ。突発的にやるだけなら、誰でもできる。大事なのは、それをどう持続させるかだ」――地元で商店を営む経営者のシビアな視点は、深尾さんを鍛え上げ、その経験はいまにも生かされている。
 
「いまも、株式会社プラスソーシャルという会社を経営したりしていますが、そういうビジネスモデルを組み立てるときのベースは、ラジオ放送局の設立から運営までの過程で叩き込まれたものです。もちろんいまも突発的にでも声をあげなければいけないときはあると思っていますが、バランスを保ちながらやっていければ」

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