夢や価値観を提供できる企業を目指して

株式会社Kaien 代表取締役 鈴木慶太

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「大学キャリアコンサルタント講座」で講師を務める鈴木氏(写真提供:Kaien社長ブログ)

在職者が抱える複雑な問題
 
 Kaienの利用説明会に参加するのは、失業中の社会人が50%を占めるが、残りは大学生と在職者が25%ずつだという。
 
「彼らは多くの場合、障害者枠ではない一般枠で働いています。障害者枠じゃないから、なんらの配慮もされていない。そうした中で、在職中だけれども上手にやれていないという不全感があり、もっとうまくいくところがあるんじゃないかと思ってKaienにやってくる」
 
 Kaienで就労支援を行っているのは発達障害が原因で職場でうまくいかなくなり、辞めてしまった人々だが、辞めるところまではいかなくとも、発達障害の疑いのある人、あるいは実際に診断された人は大勢いる。だが、そうした在職者向けのサポートに関しては、やるべきことの1%程度しかできていないのが現状だと、鈴木さんは言う。
 
「在職者のサポートはほんとうにケースバイケースで、対応がとても難しいんです。業種や職種もほんとうに様々ですし、場合によっては、職場環境にそもそも問題があることもあります。本人以上に周りのスタッフが混乱していて、その職場では発達障害じゃなくてもやっていけないよね、とか。その点、障害者枠での雇用だと、その企業と結び付いて環境調整もできます。どういうマネジメントが必要かとか、どういうものを置くべきかとか、逆に置かないべきかとか。だけど、零細企業の一般枠でクローズドな状態だと、周囲のレベルもコントロールできないし、本人以外の要因が多くて本人支援だけではどうしようもないというケースが多々ある」
 
 そうした環境での仕事に疲れてしまって支援プログラムに来るエネルギーもなかったり、そもそも薄給で支援プログラムを受けるために必要な費用を用意できずに諦めるケースもあるといい、そのことに鈴木さんは憤りを感じていた。
 
「これは発達障害者支援の場面に限ったことではないんですが、日本では失業者、アンエンプロイドにはお金が出るんです。だけど、非正規とかのアンダーエンプロイドの人には支援がないんです。仕事を続けながら利用できる制度がない。そうした問題もあり、在職者へのサポートというのは難しいんです。発達障害者支援というのは、いろんな社会の難しさと結び付いていると思います」
 
 「支援を受ける一歩手前で踏みとどまっている人」がいちばん苦しいと言われる状況は、発達障害者支援の現場に限ったことでは決してない。1でも0でもない中間の人々に目を向けていくことは、日本に生まれているさまざまな社会問題を考える上で避けて通れない課題になりつつある。

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