どんな環境でも、自分の人生は切り拓ける

株式会社ワクワーク・イングリッシュ 山田貴子

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森住直俊さんと山田貴子さん

ワクワクの鍵は自己肯定感
 
 フィリピンで活動しながら日本に目を向ければ向けるほど、フィリピンの子どもたちも日本の子どもたちも同じだと感じ、日本の子どもたちへの思いが強くなった。研修の場では、山田さんや森住さんは子どもたちとともにそこにいるだけだというが、子どもたち同士の対話の中で、学校のこと、友達のこと、お家でのことなど、普段はなかなか話せないことが自然と出てくるという。
 
「湯河原は小さいけれど、この町に育ててもらったと思っているし、将来自分の子もここで育てたいと思うほど大好きな町。なのに、学校の先生にも、友達にも、親にさえ、自分の気持ちを相談できない、自分の居場所を見つけられない子がいる。それって、もしかしたらフィリピンの子どもたちより苦しいのかもしれないって思うこともあります」
 
 経済的な豊かさとは裏腹な自己肯定感の低さ。山田さんはそれが非常に気になるのだと言う。
 
「フィリピンでも、日本のこどもたちの現状などを教えていると、『なんでこんないい子なのに、学校に行けないんだろう』とか、『なんでそこにコンプレックスを感じているんだろう』とか、非常に驚いています。そうした日本の子どもたちをフィリピンに連れて行って、こんなに世界は広いんだっていうことを感じてほしい。日本のこの狭い地域の中で、学校に行けないっていうことは、別にすべてじゃないんだよっていうことを教えてあげたいんです」
 
 フィリピンでも日本でも、自己肯定感を高めることの重要性を、山田さんは痛感している。フィリピンでラーニングジャーニーを行う上でも、日本から来る人々が、「貧困層の人」という目で見ないようにといくら努めても、現地の人々の自己肯定感が低いと、どうしても対等な立場で向かい合うことが難しく、信頼関係が築きにくい。
 
「いちばんシンプルかつパワフルなアプローチは、ラーニングジャーニーの冒頭で行っているライフストーリーの共有です。日本人と、フィリピン人と、貧困層の人は英語を話せない場合も多いので、ワクワーク・イングリッシュのメンバーが通訳として入って3人一組でやるんですが、そこでお互いの体験にぐっときたり、『これまでにたくさんの人が援助に来てくれたけれど、私の話を聞いてくれた人はあなたがはじめて』という体験をしたり」
 
 そうしてフィリピン人も日本人も、貧困層も富裕層も、同じ人間なのだという根本的な部分に改めて立ち、自分を価値ある存在と認められたとき、人は自分が心からやりたいと思えることと向き合えるのだろう。それは、日本の子どもや若者も同じだ。
 
「ありのままの自分でいていいんだ、みんな一人ひとり大切な存在なんだって、実感してほしい。そう感じられるような、愛あふれるワクワークセンターをつくりたいと思っています。」
 
 日本でも、フィリピンでも、人がほんとうに自分の心に正直に未来を選択できる環境づくりを目指して。山田貴子というたんぽぽは、いくつもの花を咲かせては綿毛になって飛び立ち、世界各地の子どもたちへとバトンをつないでいっている。
 
山田 貴子(やまだ たかこ)*1985年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学非常勤講師。2009年、大学院在学中に株式会社ワクワーク・イングリッシュを設立、代表を務め現在にいたる。2012年、世界経済フォーラム・ダボス会議の20代30代のリーダーGlobal Shapersに選出され、活躍の場を広げている。
 
【写真:shu tokonami】

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