チャレンジで自分と地域の未来を変える

株式会社ワクワーク・イングリッシュ 山田貴子

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写真提供:株式会社ワクワーク・イングリッシュ

大切なのは次へつなぐこと
 
 オープン前には、ビジネス講座も開いた。
 
「路上でココナッツのお菓子を売っていたお母さんもいたんですが、原価とか自分の労働の対価というものを考えていなかったので、利益が0どころかマイナスになっていたり。ビジネス感覚がないので、オープン前に単価や顧客数について、日本のビジネスマンの方に講義をしてもらったんです」
 
 だが、ビジネス感覚は一朝一夕で身につくものではない。
 
「行く度行く度ごはんの量が増えているんです(笑)。この売値だったら、ぜったいコストと見合わないよねって言っても、もっと食べてほしいから、って。1年経った最近、ようやくメジャーを用意したみたいですけど」
 
 できるだけ安く提供したいというメンバーの希望で、原価率は一般的な飲食店よりも高めだが、収益は1年経ってようやく黒字になってきたという。だが、それも長くは続かなかった。
 
「やっと黒字になって、このまま軌道に乗れれば、っていうところで、オーナーが代わって、家賃が2倍になってしまったんです。その結果、増えた家賃の分が、まるまる赤字になってしまいました。同じビルの3階にオンライン英会話のオフィスも入っているので、1階のカフェだけ移転することもできなくて」
 
 リニューアルオープンに向けた1か月の休業期間中に、新メニューの開発やプライシングの見直しを行い、4月から再挑戦中だ。1周年を機に、メンバーもひとりを残して入れ替わった。
 
「みんなで話し合って、お父さんお母さんの卒業式をしました。それぞれ夢を実現する準備ができたっていうことで、次のステップへ移って行ったんです」
 
 そこには、山田さんの大切にしている思いが反映されている。
 
「ワクワークですごく大切にしているのは、たんぽぽのイメージなんです。一人ひとり、どんな環境にいても、アスファルトの間からでも、芽を出してきれいな花を咲かせて、咲かせたら綿毛となって次の人にチャンスを提供していく。その人だけが変わるんじゃなくて、夢がかなったら、ロールモデルとして次へつなげていくことが大切だと思っています」
 
 いまは、レストランオーナーになりたいという夢を持っていたお母さんひとりだけが残り、教会が運営するNGOやロレガ、孤児院から来た若者たちがカフェの運営を引き継いでいる。若者たちはカフェで働いて学費を稼ぎながら大学に行く。ワクママカフェではいま、二つめの循環が生まれたところだ。

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