受けたい教育を選べるしくみに

NPO法人東京シューレ 理事長 奥地圭子

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フリースクールの公教育化を目指して
 
 小さな前進を積み重ね、2007年に東京都葛飾区に特区を活用した「東京シューレ葛飾中学校」が誕生した。
 
「フリースクールの公教育化って言っていますけど、東京シューレのようなやり方が、公教育の中で展開できたらいいなとずっと考えていたんです。二重籍の問題や公的な支援の不在、施設や人材不足を解消し、子どもたちの学ぶ権利を充実させたいと思って」
 
 東京シューレ葛飾中学校は、東京シューレの子ども中心のやり方をとりいれた学校だ。
 
「学校だから、東京シューレと同じにはできない部分もありますが、ほとんど同じようなやり方をしています。子ども中心で、個のあり方を尊重してやっていくっていうところは一緒ですね」
 
 教科ごとの学習の総時間数などは学習指導要領の9割程度と、時間割は一般的な中学校よりもゆったりと組まれている。
 
「不登校を否定的に見るんじゃなくて、必要なら学校と距離をとって休んだほうがいいって考えるのも、家で育つこともできるんだよっていってホームエデュケーションの応援をすることも、シューレと一緒です。スタッフと子どもが対等だということも」
 
 東京シューレおよび東京シューレ葛飾中学校では、学校にいる大人を「先生」とは呼ばず、スタッフと呼んでいる。子どもたちからの呼び方も、「○○さん」だ。
 
「私も『奥地さん』って呼ばれています。校長室っていうのも堅苦しいからって、子どもが上から『奥地ルーム』ってシールをぺたんと貼ってしまって、ずっとそのまま(笑)」
 
 東京シューレとまったく同じではないにせよ、かなり独自性の担保された運営ができているという東京シューレ葛飾中学校。だが、「学校」と名がついたことによって、葛飾中学校に通う子どもの親のほうが、子どもが苦しいときに「休む」という選択を受け止めるのが難しいようだ。「せっかく入った学校に通えないなんて」と、親がおろおろすることも多いという。
 
「休むことに対して子どもに愚痴をいったり怒ったりして。それでますます子どもが苦しくなるでしょう。だから親の学習会や個別面談をやったりして、親の理解を促すにはそうとう努力しています」
 
 そうして一緒に学んでいくと、親も変わっていくという。そうすることで子どもが元気になっていくのが、なによりの説得材料だ。

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