日本の農業を大きく変えたい

株式会社グランパ 社長 阿部隆昭

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株式会社グランパ 社長 阿部隆昭

地域の思いを企業に取り込んだしくみを
 
 当初8棟でスタートした復興支援事業も、いまでは12棟に。グランパが事業を拡大してきた背景には、高い技術力はもちろんのこと、被災地に寄り添う細やかな気配りがあった。
 
「地元の人たちの気持ちや人間関係といったものを無視して、よそで出来上がった技術やしくみをそのまま持ち込んでやろうとしても成功するわけがないと、私は思っています。やっぱり地元の人々の意思を汲んだしくみづくりが必要ですよね。人の気持ちがつながらないと、いい仕事はできませんから」
 
 初めて目にするような施設に、果たして人が集まってくれるだろうか。最初は不安もあったが、実際に募集をかけてみるとたくさんの人が来てくれた。
 
「正直言って安堵したんですけど、ほとんどの方に農業の経験はないし、被災して心も傷ついている。ですから、最初の一年は焦らずに、人間関係や職場の環境をじっくりつくりこむように配慮しました」
 
 通常の場合はコマーシャルベース(採算)で事業構築をはかるが、ここでも被災地の事情を考慮した。
 
「被災地ですぐに採算を念頭におくと、失敗するんじゃないかと思ったんですね。人の気持ちをつなぐものを企業の中にどういうかたちでつくりこんでいけばよいのか、とても勉強になりました。おかげさまで、2年目の定着率もよいですよ」
 
 一方で、地下水が塩分を多く含んでいるなど、被災地ならではの技術的な課題にも直面した。
 
「コマーシャルベースで見れば、そうした課題は一つひとつ順を追ってやっつけていくのが当たり前なんですよね。ただ、被災地の復興というある意味特殊な環境だったので、次々新しい技術を編み出してカバーしていかないといけなくて。苦労というほどではありませんが、相当に頭を使いました。おかげで、企業としてはすごく体力がつきましたね」
 
 阿部さんが大事にしてきたのは、東北の人々の忍耐強さや人のつながりを大切にする精神を、うまく企業イズムの中に取り込んだ環境づくり。それが被災地で成果を挙げてこられた秘訣なのかもしれない。

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