住民の、住民による、住民のためのまちづくりをめざして

NPO桜ライン311 岡本翔馬

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NPO桜ライン311 代表 岡本翔馬(写真提供:桜ライン311)

若者を生かせるまちづくりを
 
 岡本さんは、震災前と現在とで、陸前高田市に明るい変化も感じているという。
 
「僕たちみたいな若い人や組織が活躍できそうな場が、前より明らかに多いんです」
 
 震災前の陸前高田は過疎化が進んでいた。若者は町を出て行き、20代の人口は5%を切るほど。残っている若者も、気仙沼や大船渡で働く割合が多かった。
 
「でも、震災があって、この街をゼロから作り直すことになったときに、いまだったらこの街を変えられるかもしれないっていう期待感を持って、まちづくりに前向きな意欲を持ちはじめた若者が増えて来ているんです」
 
 震災後、街の機能がある程度残った地域は、どう復旧していくかに焦点を当てて復興を進めていくことが多い。その場合は、「もとの姿に戻す」意識が強まり、合意形成は早く進む一方で、よくも悪くも旧来の性格が残った町に戻っていくことになる。
 
「だけど、陸前高田は街の機能が全滅してしまった分、新しい芽が出やすいような気がするんです。世代によって望む町のイメージは全然違うし、市としても全部を役所だけで決めることはできないっていう状況の中で、僕たち若者の意見にきちんと耳を傾けてもらえる環境ができているように思います」
 
 戸羽市長や市役所とのかかわりは、その好例だ。市長とざっくばらんに町づくりを語り合える雰囲気の中ならば、若者の思いも育っていきやすいだろう。
 
「やるべきことはもちろん多いんですけど、若者しか持っていないよさを生かせる町になるんだったら、この町はすごく大きく変わるはず。僕はそうした町づくりをしていきたいし、一緒にやりたいっていう若い人が増えてきていることが、すごく嬉しいんです」
 
 同世代が同じ目標に向かってともに頑張っていることは、岡本さん自身の支えにもなっている。
 
「似たような境遇でがんばっている同世代が傍にいると、めちゃくちゃ励みになるし、仲間意識がすごく芽生えるんです。僕もひとりで頑張っていたら潰れていたと思いますが、地元の若い人たちがUターンやIターンで高田に入ってきてくれたことは、すごく大きなモチベーションになっています」
 
 負けてはいられないと気持ちが奮わせられる。良き仲間であり、良きライバルでもある。そんな関係性が陸前高田の復興を支え、後押ししている。

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