重なり合い、ひとつになる思い

NGOテラ・ルネッサンス 鬼丸昌也

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刺し子プロジェクト 吉野和也

ただ、傍にいたい
 
 吉野さんは、震災が起きるまでは東京のWEB制作会社で働いていた。ボランティアに興味を持ったこともなく、鬼丸さんとは友人だったもののテラ・ルネッサンスの活動に関わることもなかった。そんな彼の心を動かしたのは、被災地の様子を伝えるあるブログだった。
 
「ある避難所に、避難してからずっと同じニット帽をかぶっているおばあちゃんがいたそうなんです。そこに支援物資としてニット帽が届けられた。おばあちゃんは取り替えたいから自分も欲しいと言ったが、全員分ないから持っている人にはあげられないと断られて泣いている、と。その記事を見て、あげたらいいじゃないか、おばあちゃんを泣かすなって思ったんです」
 
 だが、現地には現場の事情があるはずで、それは行ってみないとわからない。4月中旬、休暇を取って被災地に行き、大切な人をいきなり亡くしてしまった人たちを目の当たりにする。
 
「愛する家族を亡くした経験が僕にはないから、その気持ちはまったくわかりませんでした。でもあの時、そうした人たちが家族みたいに大切に思えて、傍にいたいと思ったんです。傍にいれば、一緒になって笑ったり泣いたり喜んだりできるんじゃないか、少しは心が安らぐんじゃないか。そう思って、会社を辞めて大槌町に来ました」
 
 吉野さんの支援活動のパートナーは、震災後にインターネットを通じて知り合った4人の仲間だった。吉野さんから伝えられる現地の情報をもとに、東京で仕事をする仲間とスカイプで話し合う。自分たちに何ができるか、知恵を出し合うことから活動がスタートした。

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