社会保障の視点からライフスタイルを問い直す

PHP総研コンサルティングフェロー・関西学院大学経済学部教授 上村敏之

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◆ライフスタイル特区で未来のかたちを切り開く
 
 現在、「成長」をスローガンとして、東京をはじめとした大都市を中心に「国家戦略特区」という構想が検討されている。これは、アベノミクスを成功に導く一つの具体的な方策として評価することは可能だが、単にそれらが海外からの企業誘致や新たな投資のためのイコールフッティングを目的とした規制緩和に留まってはならない。急激かつ本格的な少子高齢化に対応する社会保障を実現するため、我々日本人の働き方や社会参加も含めた暮らし全体の変革を目指した「ライフスタイル特区」のようなものに発展させてゆくべきである。
 
 今後、少子高齢化が進んでいくと、我々一人ひとりがこれまでとは異なる生活を営んでいかなければ、日本社会全体を持続することができなくなるのではないか。にもかかわらず、我々はその将来像をまだ描き切れていない。その将来像をこの「ライフスタイル特区」で描いてみてはどうだろうか。
 
 その特区の中には、いままでとは異なる価値観にもとづいた生活があり、若者も高齢者も生き生きと生活している。そういうモデルづくりを特区で行うということである。そのモデルを、日本各地の地域の特性に合わせながら、全国に波及させることこそが、持続可能な社会保障の確立につながるのではないだろうか。

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