景気悪化を避けるために、家計の消費を支えよ

PHP総研コンサルティングフェロー・嘉悦大学教授 跡田直澄

_DS35094 (1)

年金保険料の引き上げを緩和せよ
 
 もうひとつ、家計への影響で見落としがちなのは6月に行われる年金保険料などの引き上げである。年金保険料は2017年までに毎年約0.7%ずつ、最高18.3%まで引き上げられることになっている。保険料の引き上げはだいたい6月に行われるが、これを止めるか、あるいは引き上げ分を消費税の増税3%分から補填したり、所得税減税などの措置をとる、といった対策を検討すべきである。
 
 6月は前年度の所得に対する地方税が新たに決まる時期でもある。多くのサラリーマンの場合、前年の昇給分にともなって住民税の金額が上がるが、4月にその年の分の昇給があるため、心理的影響はあまり大きくない。これに対して保険料の引き上げは、所得の手取りを実質的に減らすので、増税と等しく、負担感を大きくする。
 
 1997年4月に消費税が3%から5%に引き上げられたときには、それまで行われていた住民税の減税が廃止され、さらに健康保険料や年金保険料が引き上げられるという、実質的な所得税増税が重なったような事態となった。手取りが減り負担感が増したため、「4月の増税で一旦消費が落ち込むものの、6月頃までに徐々に回復していく」という本来のシナリオは狂い、6月になっても消費は抑制され続け、回復は7月以降に持ち越された。
 
 当時の消費動向を見ると、2月、3月に駆け込み需要で一気に上がった消費は、増税直後の4月、5月になると急激に落ち込んでいる。今回も同じプロセスをたどることは間違いないが、その後いかに早く消費が回復するかは、保険料対策による部分が大きい。97年の反省をもとに、保険料の引き上げにはなんらかの緩和措置を講ずるべきであろう。

関連記事