「ねじれ国会」が解消されるかどうかの分岐点で考える

政策シンクタンクPHP総研 研究主幹 永久寿夫

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若田部:現在のデータはすでに実体経済への影響をあらわしている。世界の多くの国は、リーマンショックの後、アベノミクスの原型にあたるようなことをやってきた。それらの国々では、実体経済に影響が及び、失業率も下がった。日本は遅きに失した感がある。
 
先送りになった社会保障と社会資本整備
 
加藤:景気が回復しつつある中で、やるべきことは多い。例えば、1990年から2010年までの20年間で、社会保障給付は50兆円から100兆円に。あと15年間でさらに50兆円積みあがる。また、日本はこれまで世界最高レベルの公共投資を行ってきたが、これから更新時期を迎え、大きな予算が必要となる。社会保障と公共施設については、将来の世代につけを残すかたちのままになっている。
 
ソーブル:日本が超高齢社会かつ借金王国ということは有名。この2つの問題を同時に対処するのは至難だが、議論の幅が狭すぎる。例えば、消費税以外にも税源はあるはず。企業の内部留保を賃金や設備投資に使わないなら、それに課税するとか、消費に直接打撃を与えないオプションもあるはず。
 
若田部:経済が収縮していく中で、社会保障制度や年金制度を維持するのは不可能。だから安倍政権の経済政策は評価されるべき。長期的な問題について議論を避けているのは「政治家としての合理性」。野党はそこを攻めきれていない。
 
女性の社会参画問題には民意の吸収が必要
 
ハリス鈴木:Change.orgでは、待機児童問題に対するキャンペーンが多く、いくつかの地域で大きな問題になっている。2015~16年までには完全に解消するという方針は、国民の意見を聞き入れた政策。真逆が女性手帳。少子化は問題であり、みんな性教育をちゃんと受けていないから、こういう情報は共有すべきだが、女性手帳が出てくる理屈が理解できない。ネットなどのツールを使って民意を吸い上げていく必要がある。
 
小瀬村:自治体でのアンケートでは、1年の育休も取れていない状況で3年に延長というのは不評。3年の育休後に復帰するのも大変。また、3年間無給で生活できる人がどれだけいるのか?待機児童対策で消費税増税後に子ども・子育て支援新制度が始まるようだが、当事者の多種多様のニーズに適切に応えられるのか、財源は十分なのか。人気取りが先行して、実態を踏まえた政策になっていないのでは。
 
加藤:待機児童の問題は、都会とりわけ東京を中心とした、ローカルに凸凹のある問題。ローカルなものはローカルできめ細かくやらないと結果的に全体としてバラ撒きのようになる。制度自体がリアリティから乖離している。それを役人も政治家も把握すべき。

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