成長戦略の本格化と発信力のアップを期待する

グレン・S・フクシマ(米国先端政策研究所上級研究員)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

 グレン・S・フクシマ氏は、1985年から90年まで米国通商代表部(USTR)で日本担当部長ならびに通商代表補代理(日本・中国担当)、90年から2012年まで米国4社と欧州1社の多国籍企業の日本代表、その間93年から99年にかけて、在日米国商工会議所の副会頭と会頭を務めるなど、日米政財界をつなぐ日系米国人の重鎮である。そのフクシマ氏に、現在の安倍政権の経済、外交・安保政策に対するアメリカの見方、参議院選・大統領選挙後の日米関係の行方、日本のソフトパワーを高める方法などについて話をうかがった。

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1.持続性ある成長には構造的変革が必要
 
永久 以前、安倍政権に対するアメリカの見方には、「good」「bad」「uncertain」の3種類があるとおっしゃっていましたね。「good」は経済再生への取り組み、「bad」は歴史認識を改訂しようとする姿勢、「uncertain」は安全保障政策の動きに対するものだったと記憶しています。いま、こうした見方は変わっているのでしょうか。まずは、経済再生への取り組みはいかがですか。
 
フクシマ アベノミクスでは、ワシントンDCでもウォール街でも、1本目の矢の金融政策と2本目の矢の財政政策については評価が高かったと思います。3本目の成長戦略については、どこまで実施できるのかという疑問がありました。その疑問は、期待が高かっただけに、まだ払しょくされていないし、当初に比べるとアベノミクスに対する評価は低下傾向にあります。
 
永久 低下の理由は何でしょうか。株価に関しては2倍くらいになっていますよね。
 
フクシマ 1本目と2本目の矢は効果を出していると言ってよいと思うのですが、これは、政府や日銀が「実行」できることです。しかし、第3の矢は、構造改革や規制改革なので、強い抵抗がある。政府が間単に実行できることではないし、たとえ「断行」したとしてもすぐに結果が出るものではありません。
 例えば、「女性の進出」にいくら予算を付けても、成果がでるには、時間がかかりますよね。第3の矢を本格的にやらなければ、持続性ある成長は期待できないのではないか。それがあまり進んでいない。そういう意味で、アベノミクスに対する評価は以前より低くなった印象です。
 
永久 「good」から「uncertain」になったということですか。実際、数字を見ても、実質賃金はほとんど上がらないし、消費も設備投資も低迷している状況ですね。規制緩和なども含めて構造改革を進めないと、持続的な成長は望めないということですね。
 
 

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グレン・S・フクシマ氏(米国先端政策研究所上級研究員)

2.外国人をなぜもっと活用しないのか
 
フクシマ それから、やはり人口減少が根本的な問題で、これに対する対策はまだ出来ることが沢山あると思います。例えば、労働力不足への対策として、女性の進出や高齢者の活用、さらにはロボットを使うと説明していますが、もっと外国人の活用が必要だと思いますね。日本の介護施設に関するテレビ番組で、施設はある、入りたい人も大勢いる、だけど職員不足で介護できない、だから空き部屋がたくさんある、と報道されていました。なぜ外国人を活用して、それを改善しないのか。日本の外から見ると不思議ですね。
 
永久 3年ほど前に亡くなられた加藤寛先生も、ずいぶん前に、東南アジアなどから人材をどんどん募集すればいいとお話しされていました。外国人介護師・看護師の受け入れは、2008年から始まりましたが、現実的にはあまり進んでいませんね。
 
フクシマ 日本人がそれでいいなら仕方がありませんが、介護が必要な人がとても気の毒です。
 
永久 昨年9月にアベノミクス新3本の矢が発表されました。「希望を生み出す強い経済」でGDP600兆円、「夢をつなぐ子育て支援」で合計特殊出生率1.8%、「安心につながる社会保障」で介護離職ゼロというものです。これは3本の矢というよりも3つの「的」という感じですが、これをどう評価されますか。
 
フクシマ GDP600兆円を2020年までに達成するには毎年約3%の成長が必要です。経済同友会の小林喜光代表幹事が「明らかに実現不可能だ」と発言しているように、実現性にはまだ課題があります。人口減少については、本格的な対処として、何か斬新な策が必要でしょう。発表の中で海外からの直接投資促進のために、英語をもっと使いましょうとか、インターネットの接続費用を軽減しましょうとか、いろいろ改善策があげられていました。そうした地道な努力も必要ですが、根本的な改善策は盛り込まれていなかったという印象です。
 
永久 人口の問題では、政府からの要請で、自治体が地域の人口ビジョンをつくることになっています。だいたいのところは政府が示した合計特殊出生率1.8%で計算して、将来は何人にするという目標値を出すんですね。では、そのために何をするかというと、子育て環境を充実させて20代・30代のカップルの移住を促すといったものばかりです。それは競争なのでいいのだけれど、俯瞰するとゼロサムゲームになります。そうすると、結局、制度はつくった、施設もつくった、けれど国全体としての結果は変わらない。人口を増やしたり、経済を活性化するには「働き方」の工夫をするなど、多面的な政策が必要なのだろうと思います。
 

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永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

3.歴史問題では地域の安定性を重視する
 
永久 アメリカが「bad」と見ていたのは、慰安婦問題や教科書問題など、歴史問題でしたね。
 
フクシマ 2013年4月の安倍総理の「侵略否定発言」から12月の靖国参拝までの間、当時の橋下大阪市長の「慰安婦発言」や麻生副総裁の「ナチス発言」などがありました。こうした言動が国際関係に悪影響を与えるのではないかと懸念されました。
 ただし、2014年4月のオバマ大統領訪日あたりから改善がありましたね。あの時は、政府間でかなりの下準備と調整があって、オバマ大統領からは「尖閣列島には日米安保条約の第5条を適用する」「日本の集団的自衛権の行使に関しても賛同する」という発言が初めてありました。安全保障面での日米協力が徐々に深まってきて、昨年の安倍総理の訪米で固まったと思います。この時にも相当な下準備がありましたね。
 
永久 フクシマさんの発言の影響もあるのでしょう。「歴史問題の発言などはbad」というシグナルを出したら、日本政府は控えるようになって、しかもオバマ訪日や安倍総理訪米に際しては念入りな準備をしているわけですから。
 
フクシマ 米議会の関係者から随分ヒアリングをしたみたいですね。私に限らず、ワシントンの関係者から、民主党でも共和党でも、あるいは学者などからも、歴史問題にはあまり触れないほうがいい、将来に焦点を当てたほうがいい、というアドバイスが安倍政権発足の時からずっと発信されています。
 
永久 歴史問題については、政府が意識的にトーンダウンさせていったということですね。昨年の8月14日に安倍総理が談話を出しました。日本では賛否両論あって、「踏み込みが足りない」という人もいれば、「いや、あれで十分だ。きっちり謝罪も継続している」という評価がありますが、アメリカではいかがですか。
 
フクシマ 歴史認識の問題は、中身の問題もあるのですが、それ以上に、そういう言動によって、日韓関係、日中関係が悪化するのではないかと懸念する人がアメリカでは多いと思うんですよ。
 
永久 この地域の安定のほうが重要だと。
 
フクシマ そうです。特に、日韓関係がギクシャクすると、アメリカのアジア政策がやりにくくなります。とりわけ北朝鮮や中国に対して。だから、韓国と日本がもっと協調して、3カ国で協力できる体制をつくりたいという希望がアメリカ側にはあります。安倍総理の談話も、オバマ政権としては、中身を吟味するにしても、それに対する韓国や中国の反応が最大の関心事なのです。結果として、中国も韓国もさほど問題にしなかったので、アメリカも問題視しなかったということです。
 
永久 彼らの対応は微妙な感じでしたが、「bad」だった歴史問題というか、外交問題に関していうと、いささか「good」になってきたと理解していいんですか。
 
フクシマ 一言で言えば「remission(小康状態)」でしょうか。問題がなくなったわけではないけれど、沈静化した。でも、いつまた発生するかわからないということでもあります。
 

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4.専門家には評価が高い日本の安保政策
 
永久 「uncertain」だった安全保障の問題ですが、集団的自衛権を認める判断をし、安保法制も可決しました。アメリカはこれを好意的に受けとめている、と認識しているのですが、どうですか。
 
フクシマ オバマ政権の安全保障の専門家たちは、安倍政権はアメリカとの安全保障関係の強化に努力していると評価しているし、政権外でも、特に共和党の中の、中国を懸念している人たちの間では、NSC(国家安全保障会議)や特定秘密保護法の成立、武器輸出規制の緩和、集団的自衛権の行使容認といった一連の動きに対して一定の評価があります。そういう意味では、「uncertain」が「good」になったと言えますね。ただ、日本の安全保障政策の変化を理解しているのはアメリカ人の5%程度だと思います。
 
永久 それは一般人を含めた全アメリカ人という意味ですか。
 
フクシマ はい。要するに、アメリカの防衛問題の専門家たちが評価しているということで、一般人は知らないし、学者とかジャーナリストの中には、いまもなお日本の防衛体制の強化より、経済再生のほうが重要ではないのかと言う人もいます。一部には、日本の防衛体制の強化は、地域の緊張を高める可能性があるという向きもあります。だから、必ずしもアメリカ全体が日本の安全保障政策に大賛成しているというわけではありません。
 
永久 安倍政権がこれから何年か続くとすると、今後は憲法第9条の改正を目指すと思うのですが、そうなるとアメリカの日本に対する見方は、「uncertain」から「bad」に転じる危険性があるということですか。昔からある議論ですが……。
 
フクシマ やり方次第だと思うんですね。もし、日本の「国民」が、十分理解の上で賛成し、法律に基づいて憲法が改正されるのであれば、それは民主国家としての「権利」ですので、アメリカが批判する理由はありません。ただ、国民が賛同していないのにやろうとしていると見られると、批判の対象になるでしょうね。
 
永久 さきほどのロジックから言うと、結果として、中韓との関係が悪化しないようなかたちで改正されるならば、民主国家である日本に対してとやかく言う筋合いはないということですか。
 
フクシマ いえ、中国や韓国から反発があったとしても、日本の国民が希望してやることであれば、アメリカとしては批判する理由はありません。歴史問題に対するアメリカの感覚は、サンフランシスコ講和条約で一応決着したはずのものを、また修正しようとしているということで、憲法改正の話とは違います。
 
永久 歴史問題は、国際的に一回けりがついたものをまた掘り起こして、不安定にさせるというような感じですか。
 
フクシマ はい。ですが、憲法改正は主権の問題であって、周りの国が何を言おうと、国民が望むのであれば、それは民主国家としての当然の権利です。
 

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5.人口動態の変化が民主党を有利にさせている
 
永久 さて今年は選挙の年、日本では参議院選挙が7月に予定されています。ある世論調査をみると、昨年の夏から秋にかけての安倍政権の支持率は40%前後だったのですが、12月に入って47%に上がりました。安倍政権の支持率はそれなりに高いんですね。一方の野党にはまとまりがないので、参院選では与党が勝つというのが大方の見方です。ということは、安倍政権のこれまでの経済政策、外交・安保政策が継続もしくは強化されると見るのが妥当なんだろうと。その時に、アメリカでは大統領選挙がある。誰になるのか、民主党なのか、共和党なのか。その違いによって日米関係にはどのような影響があると思いますか。
 
フクシマ 民主党ではヒラリー・クリントンが候補になると思いますね。自らを「社会主義者」と呼ぶバーニー・サンダースも人気があるのですが、彼を最終的な候補者として残したいという人はほとんどいないと思います。もし彼が民主党の最終候補になると、共和党が勝つ可能性が高まる恐れがあるからです。ただ、予備選の間、彼の支持者達は、彼を候補者として残すことで、「タカ派」「体制派」のヒラリーをもっと格差問題を含む庶民重視の経済政策に取り組むよう仕向けられるということです。
 
永久 共和党の方はどうですか。候補者がたくさん残っていますね。
 
フクシマ ジェブ・ブッシュは知名度も資金力もあるのですが、政策面が冴えないしコロコロ変わるので、残る可能性はかなり下がっていますね。世論調査では、政治家ではない、ドナルド・トランプ、ベン・カーソン、カーリー・フィオリーナの人気が高いですね。その背景には、共和党右派の間で政治家に対する不信が強いことがあります。ただ、トランプが共和党の最終候補者として残る可能性は低いと思いますね。「アメリカにはモスクは要らない」といった発言には共和党内からも批判が出るくらいですから。
 現時点では、マルコ・ルビオとテッド・クルーズが最有力候補と見られていますが、2008年の選挙を振り返ると、1年前の時点でリードしていた候補者が最終候補者としては残りませんでした。今回、民主党では番狂わせはなさそうですが、共和党のほうは誰になってもおかしくない状況ですね。
 
永久 ある方から、いわゆるWASPの影響力が相対的に低下している。人口動態の変化で構造的に民主党が有利という話を聞いたのですが、この点はいかがですか。
 
フクシマ 相対的に人口が増えている女性も若者も黒人もヒスパニックもアジア系アメリカ人もLGBTも、みんな民主党寄りです。ニューヨーク州もカリフォルニア州も、大統領選挙は民主党支持になることを誰も疑問視しないですね。テキサス州は現時点では共和党支持ですが、次の20年の間に変わると思いますよ。こうした全体的傾向を踏まえると、共和党の候補者が誰になったとしても、ヒラリーのほうが有利だと見られています。
 

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6.日本は世界第3位の経済大国としてのコミットメントを求められる
 
永久 先ほどのお話と合わせると、多様性を包含するのが民主党であって、その中でいささか体制的というか保守的な部分もあるヒラリーが今のアメリカの民意の大きな部分を吸収する力があるということですね。
 
フクシマ そうですね。さらに、ヒラリーの場合は、もともと有能な弁護士であるうえに、8年間のホワイトハウスの経験で、夫の失敗もたくさん見ている。上院議員の経験もあれば、国務長官も務めている。ホワイトハウス、議会、外交、全部の分野に経験を持っているわけです。オバマに対する一つの批判は、あまりにも未経験だったこと。今回はもっと経験がある人が必要だという反動があります。もっとも、アメリカにおいては、大統領選挙では、極端に「新顔」に期待し、経験を軽視する傾向がありますが……。
 
永久 ヒラリーには安定性を求めたいということですかね。もし彼女が大統領になると、日米関係を含めて、アメリカの外交・安保政策、経済政策は、今の状態を継続していくと見ていたほうがいいということですか。
 
フクシマ ヒラリーは、外交に関しては積極的・能動的な政策を進めると思います。オバマは、どちらかというと、事件があってから対応するという、場当たり主義というと強すぎますが、何かビジョンのもとに戦略を立て、それで外交を遂行するというタイプではないですね。その理由の一つには、外交では、彼にとって最大の任務はアフガンとイラクから撤退すること、という認識があったのかもしれません。逆にヒラリーには、アメリカが外国に関与しなければ世界がおかしくなってしまうという感覚があるように思われます。
 
永久 ヒラリーが大統領になると、国際政治における日本のコミットメントを一層求めてくる可能性があるということですね。
 
フクシマ 最終的に誰が大統領になるかによって程度は異なるかもしれませんが、誰がなったとしても、アメリカは日本に世界第3位の経済大国としての役割を果たすことを期待するでしょう。
 

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7.日本のソフトパワーを英語で発信しなければ
 
永久 国際政治においては、もちろん軍事力や経済力などが影響力の源となりますが、一方で、伝統・芸術・文化、さらには価値観といったソフトパワーも大きな力を発揮します。フクシマさんはあるところで「日本のソフトパワーは相当なものだということを、日本人はもっと認識すべきだ」とおっしゃっていますが、少し詳しくお話いただけませんか。
 
フクシマ 日本の伝統文化も近年の文化も非常に魅力的なことは事実なのですが、それを十分に発信していない、説明し切れていないと思います。音楽や絵画などの美術品、料理、さらには工芸品や建築物といった技術など、言葉を使わなくても伝達できるものはいいんですが、文芸や学術、考え方、価値観といった何か説明が必要なものは、やはり英語で説明しないと限界がある。だから、英語教育にさらに力を注がなければならないと思います。
最近、驚くべき統計を見ました。TOEFLの「話す能力」の日本の点数が170国中で最下位なんです。実際、言論人が集まってディスカッションをする時など、ものごとを論理的に説得力ある英語で説明できる日本人が、あまりにも少ないのです。これではせっかくのソフトパワーを十分に発揮できません。
 
永久 それは、実感としてわかります。では、どうするか、なのですが、日本では世界に通用するグローバル人材を育成するプログラムをいろいろやっているんですね。具体的には、英語で教える授業とか、日本や諸外国の文化・伝統を学ぶ授業とか、欧米の教育方法を取り入れたりとか、そうした大学のプログラムに国がお金をつけるんです。
 政府の仕事で、ある国立大学を見学したのですが、広大なキャンパスの一角に他とは違う雰囲気の建物がありました。授業もアメリカのような感じです。そこで、そこにいたイギリス人の職員に聞いたんです。「これでグローバル人材が育ちますか」って。そしたら首をかしげるんですね。「どうして」とたずねたら、「この建物の中だけだから」って言うんですよ。
 つまり、キャンパスのわずかな部分だけが「出島」になっているだけで、ほとんどの部分は普通の日本の大学と変わらない。これでは、質でも量でもグローバル人材の育成は限定的にならざるをえません。出島ではなくて「開国」すべきなのではないか。教える側も教えられる側も世界基準で採用するということですが、これが政治的になかなかできない。何かグッドアイデアはないですか。
 

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8.日本の若者はもっと海外留学をしよう
 
フクシマ 日本では、英語で教える授業が何パーセントになったとか数字だけを気にしていますが、中身が問題です。ある方から聞いたのですが、日本人の学者の中には、外国留学後に日本の大学で英語で授業をしても、留学生にとってはあまりよくわかる英語ではない場合があるとのことです。講義の内容も、留学生が本国の友だちに「あまり中身がないから、ほかの国の大学に行ったほうがいいよ」と言われるほど。英語のレベルだけではなくて、話す内容の質も改善しなければならないということです。
 日本の一流大学と、欧米の一流大学を比べると、社会が大学に対して求めているものが違うんでしょうね。日本の場合、理工学系はともかく、社会科学とか人文科学の分野においては、親も会社も学生自身も勉強にあまり期待していないのではないでしょうか。
 
永久 期待は高まっていると思うんです。最近はグローバル化が広がって、企業の大小にかかわらず、英語ができないと仕事にならない環境が増えてきている。でも、現状がそれに追いついてない。いまのお話のなかで強く共感するのは、英語だけじゃなくて、物事の捉え方、考え方、分析の仕方、ロジック、そうしたものを日本の教育の中では学ぶ機会が少ないということです。
 
フクシマ アメリカでやっているのは、「critical thinking」、つまり論理的に物事を分析しながら、現状の考えを覆すような議論をするという教育ですよね。これが「liberal arts」教育の基本ですが、日本の社会に果たしてなじむかどうか。
 
永久 なじむかどうかは別として、この国がサバイバルしていくには、「liberal arts」教育の充実が必要だと思うんです。
 
フクシマ 現状がなかなか変えられないとすれば、やはりより多くの日本の若者に海外留学の経験をしてもらうのが重要ですね。日本にいると非常に居心地がよくて、外国に出ない。外のことをあまり経験する機会がないんですね。遊びに行くだけじゃなくて、現地でほかの教育制度に触れる機会をつくってほしい。そうすると、世界のことも日本のこともよくわかるようになる。私の友達でも、高校や大学時代に海外留学したことによって、人生が変わったという人がたくさんいます。
 
永久 私もそのうちの一人です。
 
フクシマ そうですね。将来のことを考えると、若い人には本当に海外留学を勧めたいです。また、日本の大学にも、海外からの留学生や教員を増やして、国内でのグローバル環境の整備を推奨したいと思います。
 

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