成長戦略の本格化と発信力のアップを期待する

グレン・S・フクシマ(米国先端政策研究所上級研究員)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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4.専門家には評価が高い日本の安保政策
 
永久 「uncertain」だった安全保障の問題ですが、集団的自衛権を認める判断をし、安保法制も可決しました。アメリカはこれを好意的に受けとめている、と認識しているのですが、どうですか。
 
フクシマ オバマ政権の安全保障の専門家たちは、安倍政権はアメリカとの安全保障関係の強化に努力していると評価しているし、政権外でも、特に共和党の中の、中国を懸念している人たちの間では、NSC(国家安全保障会議)や特定秘密保護法の成立、武器輸出規制の緩和、集団的自衛権の行使容認といった一連の動きに対して一定の評価があります。そういう意味では、「uncertain」が「good」になったと言えますね。ただ、日本の安全保障政策の変化を理解しているのはアメリカ人の5%程度だと思います。
 
永久 それは一般人を含めた全アメリカ人という意味ですか。
 
フクシマ はい。要するに、アメリカの防衛問題の専門家たちが評価しているということで、一般人は知らないし、学者とかジャーナリストの中には、いまもなお日本の防衛体制の強化より、経済再生のほうが重要ではないのかと言う人もいます。一部には、日本の防衛体制の強化は、地域の緊張を高める可能性があるという向きもあります。だから、必ずしもアメリカ全体が日本の安全保障政策に大賛成しているというわけではありません。
 
永久 安倍政権がこれから何年か続くとすると、今後は憲法第9条の改正を目指すと思うのですが、そうなるとアメリカの日本に対する見方は、「uncertain」から「bad」に転じる危険性があるということですか。昔からある議論ですが……。
 
フクシマ やり方次第だと思うんですね。もし、日本の「国民」が、十分理解の上で賛成し、法律に基づいて憲法が改正されるのであれば、それは民主国家としての「権利」ですので、アメリカが批判する理由はありません。ただ、国民が賛同していないのにやろうとしていると見られると、批判の対象になるでしょうね。
 
永久 さきほどのロジックから言うと、結果として、中韓との関係が悪化しないようなかたちで改正されるならば、民主国家である日本に対してとやかく言う筋合いはないということですか。
 
フクシマ いえ、中国や韓国から反発があったとしても、日本の国民が希望してやることであれば、アメリカとしては批判する理由はありません。歴史問題に対するアメリカの感覚は、サンフランシスコ講和条約で一応決着したはずのものを、また修正しようとしているということで、憲法改正の話とは違います。
 
永久 歴史問題は、国際的に一回けりがついたものをまた掘り起こして、不安定にさせるというような感じですか。
 
フクシマ はい。ですが、憲法改正は主権の問題であって、周りの国が何を言おうと、国民が望むのであれば、それは民主国家としての当然の権利です。
 

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