成長戦略の本格化と発信力のアップを期待する

グレン・S・フクシマ(米国先端政策研究所上級研究員)×永久寿夫(政策シンクタンクPHP総研代表)

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グレン・S・フクシマ氏(米国先端政策研究所上級研究員)

2.外国人をなぜもっと活用しないのか
 
フクシマ それから、やはり人口減少が根本的な問題で、これに対する対策はまだ出来ることが沢山あると思います。例えば、労働力不足への対策として、女性の進出や高齢者の活用、さらにはロボットを使うと説明していますが、もっと外国人の活用が必要だと思いますね。日本の介護施設に関するテレビ番組で、施設はある、入りたい人も大勢いる、だけど職員不足で介護できない、だから空き部屋がたくさんある、と報道されていました。なぜ外国人を活用して、それを改善しないのか。日本の外から見ると不思議ですね。
 
永久 3年ほど前に亡くなられた加藤寛先生も、ずいぶん前に、東南アジアなどから人材をどんどん募集すればいいとお話しされていました。外国人介護師・看護師の受け入れは、2008年から始まりましたが、現実的にはあまり進んでいませんね。
 
フクシマ 日本人がそれでいいなら仕方がありませんが、介護が必要な人がとても気の毒です。
 
永久 昨年9月にアベノミクス新3本の矢が発表されました。「希望を生み出す強い経済」でGDP600兆円、「夢をつなぐ子育て支援」で合計特殊出生率1.8%、「安心につながる社会保障」で介護離職ゼロというものです。これは3本の矢というよりも3つの「的」という感じですが、これをどう評価されますか。
 
フクシマ GDP600兆円を2020年までに達成するには毎年約3%の成長が必要です。経済同友会の小林喜光代表幹事が「明らかに実現不可能だ」と発言しているように、実現性にはまだ課題があります。人口減少については、本格的な対処として、何か斬新な策が必要でしょう。発表の中で海外からの直接投資促進のために、英語をもっと使いましょうとか、インターネットの接続費用を軽減しましょうとか、いろいろ改善策があげられていました。そうした地道な努力も必要ですが、根本的な改善策は盛り込まれていなかったという印象です。
 
永久 人口の問題では、政府からの要請で、自治体が地域の人口ビジョンをつくることになっています。だいたいのところは政府が示した合計特殊出生率1.8%で計算して、将来は何人にするという目標値を出すんですね。では、そのために何をするかというと、子育て環境を充実させて20代・30代のカップルの移住を促すといったものばかりです。それは競争なのでいいのだけれど、俯瞰するとゼロサムゲームになります。そうすると、結局、制度はつくった、施設もつくった、けれど国全体としての結果は変わらない。人口を増やしたり、経済を活性化するには「働き方」の工夫をするなど、多面的な政策が必要なのだろうと思います。
 

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