安定財源の確保と税金の投入先の見直しを

林宏昭(関西大学経済学部教授)×上村敏之(関西学院大学経済学部教授)

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5.受益と負担を住民が意思決定できるように
 
上村 ところで、大阪都構想についてはどうお考えですか。
 
 私はむしろ道州制への移行が必要と考えているので、大阪府を強くするより、大阪府をなくしたほうがいいと思っています。東京都の場合、むかし、東京市の力がとても強かった。だから、例えば東京市域以外の消防もやるよということで東京都ができた。大阪都の議論は、大阪府が大阪市を取り込みたいという話で、全然次元が違う。
 
上村 基礎自治体の機能を強化していくということですか。
 
 すべての基礎自治体が政令市並みの権限を持てばいいと思います。政令市の機能を持てば都道府県は不要になります。
 
上村 大き過ぎる政令市では、きめ細かい福祉的な手当てや、先ほど話がでた居場所づくりみたいなことは難しくなりますね。だから、人口20~30万人程度の中核市ぐらいの大きさにして、そこが政令市ぐらいの権能を持つというのが理想的だと思うのですが。
 
 大都市はきめ細かいことをするために、区役所の機能を高め、地域の活動をバックアップしないといけないでしょうね。
 
上村 福祉をするにしても、基礎自治体の機能を強化すると同時に財源も保証しないといけませんね。
 
 財源についてですが、地方税はいまより少なくてよいと思います。マクロでみて、税金全体の4割が地方税というのは国際比較のうえでは多いですよ。一方、地方の支出の方をみると、ほとんどは国で決められたことに使っていて、国との持合いになっている。極端な例を言えば、福祉は地方が自ら税金を集めて行うが、学校は国が国の税金でやる、とか。こういうメリハリがないと。
 
上村 いまはそういう制度になっていませんね。
 
 アメリカに住んでいたとき、学校教育を充実させるために雇う先生の数を増やすという議論があって、そのために税率を引き上げるかどうかの住民投票をやっていました。そのなかで、学校の水準が上がれば地価が上がるから、みんなにメリットがあるよ、といった運動もするんです。こうしたことは、いまの日本ではできませんね。
 
上村 受益と負担について住民が意思決定する機会があるということですよね。日本だと、その財源をどこから持ってくるのかという予算のやりくりの話になっちゃいます。国からの補助金があるかどうか、一般財源でどこまで見るかとか。
 
 日本でも、市町村では、水道料金などの値上げの話を住民にしているんですよ。でも、都道府県は何もそういった住民対応はしないでしょう。だから、国の出先としての都道府県はなくていい。森林や河川などについては、たまたまそこに住んでいる自治体の人が責任を持つというのは厳しすぎるので、それは国がやると。つまり、国の税金を充てるところと、地域が自分で工夫してやるべき部分をはっきり分けることが大事なのです。

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