「グローバル」ではなく「惑星的(プラネタリー)」に地球の課題を考える

竹村真一(京都造形芸術大学教授)×永久寿夫(PHP総研研究主幹)

A91A4905
竹村真一氏(京都造形芸術大学教授)

4.現代文明にはまだ大きな伸び代がある
 
竹村 現在のサステナビリティ議論は、とても消極的です。つまり、現代文明は現状維持するほどの価値があるものかというと、まだまだ伸び代がある幼年期にあると思うんです。もっと先へ行くために、もっとクリエイティブにならないといけない。例えば、いまは普通の車でも何百馬力もありますよね。しかも、猫もしゃくしも車に乗っている。本来目的である移動のためにガソリンのエネルギーの何%を使っているかというと、だいたい1割。あとは……。
 
永久 熱になっちゃいますね。
 
竹村 それも人間が移動するために使っているのは1%以下で、あとは車体を運ぶためなんですよ。白熱電球だって光になっているのは1%以下で、99%は浪費している。つまり、タンカー100隻で石油を運んできて、99隻はドブに捨てているというか、都市を温めるために無駄にしている。それが、ヒートアイランド現象とか、温暖化とかになっている。
 
永久 別の言い方をすると、タンカー99隻分の伸び代がまだある。
 
竹村 だから、やるべき、あるいはやれることがいっぱいある。ここまで文明が発達して便利になって、やれることほとんどないように見えるし、その一方で問題ばかりが多くて、何か閉塞感を持っている若者も多いようだけれど、実は、そうじゃない。クリエイティブになれば、クリアできることがたくさんある。一方、アメリカ発のクリエイティング・シェアード・バリュー(CSV)という言葉がはやっていますが、これはシェアする範囲が人間社会に閉じています。これを開かなければならない。
 
 日本の場合、例えば水田で稲を育てて食料をつくる過程で、水をなだめて、治水、保水をしながら、環境をよくして、他の生き物たちも生育しやすい、卵を産んでも育ちやすい環境をつくってきたんです。これは、単に食料や人間のサステナビリティを高めるというだけではなくて、地球の価値を創造していると言える。森羅万象、生きとし生けるものすべてとシェアできる価値の創造、そういう概念を日本から発信していきたいと思ったんです。
 

関連記事