日本の国際的存在感を高めるには

加治慶光×藤井宏一郎×金子将史

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藤井宏一郎氏(PHP総研コンサルティング・フェロー)

■巧みに対外発信しているのはどの国か
 
金子 安倍政権の対外発信はある程度うまくいっているかもしれませんが、日本だけでなく世界の国々も対外発信に力を入れています。世界全体でみた場合に日本のパブリック・ディプロマシーはどのくらい頑張っているといえるでしょうか。
 
 
藤井 南カリフォルニア大のパブリック・ディプロマシー・センターが、英語メディアで言及されたパブリック・ディプロマシー関連の記事を集計していて、実は日本は記事で言及された数で何と136ヶ国中9番目なんです。日本のパブリック・ディプロマシーは存在感がないと言われるけれども、実はトップ10に入っている。ちなみに、1位から15位まで言うと、米国、中国、インド、イスラエル、ロシア、パキスタン、イラン、英国、日本、韓国、トルコ、カナダ、北朝鮮、エジプト、ブラジル。
 
 よくみると、上位の国の多くは不安定地域の国々なんです。紛争を抱えている東アジアと中東と、それに関与している英米圏、さらに新たにのし上がろうとするBRICs。そういったところがパブリック・ディプロマシーのアクターとして目立っているわけなんです。
 
金子 言及はされているけど、必ずしもパブリック・ディプロマシーに長けているとはいえないということですよね。
 
藤井 そうです、紛争がある状況への反応として、あるいは紛争を解消する手段としてパブリック・ディプロマシーが注目されているということです。通常、パブリック・ディプロマシーや国家ブランドが強いと思われているフランスやドイツ、北欧諸国は出てこない。
 
  ただし、これをツイッター外交に関する統計と併せて見ると別の面が見えてすごくおもしろい。政府機関、政府首脳、外交官、大使館などがツイッターアカウントをどう運用しているかについて、PR会社のバーソン・マーステラがやっているTwiplomacyという調査ですが、その2013年報告書で見ると、世界で一番相互フォローが多い政治家は、スウェーデンのカール・ビルト外務大臣なんです。その次は、EUの欧州対外行動局で、その次に、ポーランド、イギリス、フランスの外務省と続きます。2012年のツイッター・ディプロマシーで最も相互フォローが多かったのは、EUのファン・ロンパイ議長だそうです。また、最もツイート数が多かったのが、ベネズエラ大統領府、ドミニカ共和国大統領府、クロアチア政府、ウクライナ内閣、と続く。
 
 ツイッターというのは、お互いつながり合って会話したりするわけじゃないですか。だから、相互フォローはジオポリティカルに厳しい状況では難しい。しかし欧州では、もともと外交サロンの文化やEUという地域的枠組みがあって、深刻な紛争がない環境下で外交官同士がつながりを築いている。更に、スウェーデンでは気軽に一般人からのツイートに応えたりしています。逆にそれができる状況にある人たちなんです。一方で、相互フォローではなくて一方的なツイートが多いのは、何とかして世界の注目がほしい立場の小国、といえるでしょうか。ツイッターはメディア弱者の発信ツールでもあります。
 
 ちなみに、日本の首相官邸はフォロワー数では日本語アカウントの@kanteiが世界で43位で、英語アカウント@JPN_PMOはトップ50に入っていない。相互フォロー数も昨年7月時点で3つだけで、トップ50圏外。ツイッター外交になると日本ってガクンと落ちるんです。
 
  おもしろいのはアメリカです。オバマ大統領は、世界で一番フォローされているけれども、彼は、逆にリツイートだとか、自分でフォローはしていない。対話的ではないんです。アメリカはパブリック・ディプロマシーの大きなアクターなんだけれども、やはりコンフリクトの中にある国だからでしょうね。

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