就学義務制度のほころびをこれ以上放置すべきでない

政策シンクタンクPHP総研 主席研究員 亀田徹

PDR_0353

不登校とインターナショナルスクールで異なる問題点
 
 現行制度は実態に合っていない。この点をもうすこし詳しくみてみよう。
 不登校に関し、学校制度の弾力化が推進されてきたのはたしかである。
 
 たとえば、不登校の子どものための教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールに子どもが通った場合、その日数を学校の出席扱いとする措置が講じられている。平成17年度からは、ITを活用して自宅で学習した場合、学校に戻ることを前提とするなど一定の条件のもとで出席扱いもできるようになった。
 
 学習指導要領の弾力化もはかられている。不登校の子どもが通うための学校では学習指導要領によらずに教育課程を編成できるとされており、授業時間数を削減した特別の教育課程を設けている東京シューレ葛飾中学校などの例がある。
 
 だが、これらはあくまでも学校制度の枠内の措置に過ぎない。出席扱いや学習指導要領の例外措置が講じられたとしても、教育は学校で行うという建前は頑なに維持されている。学校に通わないという選択が制度上認められているわけではない。
 
 子どもは学校に通わないことに罪悪感を抱くという。学校以外の場での学びを選択できることを認め、不登校の子どもやその保護者を支援する仕組みをつくらなければ課題の解決には近づかない。
 
 インターナショナルスクールに関しては、不登校のケースとは異なる問題がある。
 
 学校教育法および同法施行令によると、正当な事由なく子どもを学校に通わせていないときは教育委員会は保護者に対し出席の督促をし、これに従わなければ罰金を科すこととなっている。不登校の場合は子どもを通わせないことの「正当な事由」に該当すると解釈されており、就学義務違反の問題は生じない。
 
 他方、インターナショナルスクールに子どもを通わせる場合はやむを得ないものとはみなされず、「正当な事由」には該当しないとされる。その結果、就学義務違反のおそれがあるのだ。
 
 とはいえ、通常、罰金が科されることはない。制度と現状との乖離が顕在化するのを防ぐため、子どもたちの実態に配慮して教育委員会があいまいな運用にとどめているからだ。
 
 明治以降の学校制度においては市町村の許可を得て学校に通わせないことも例外的に認められていたが、昭和16年の国民学校令により例外が廃止され、すべての子どもが国民学校に通うこととされた。
 
 前述のように学校に通わない・通えない子どもがいる現在、70年前から続く就学義務制度を改正すべきとの強い声がある。

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