よりよき「国づくり」という観点から憲法の見直しを―与野党憲法改正案を比較する―

政策シンクタンクPHP総研 研究主幹 永久寿夫

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 一歩踏み込んだ民主党の「分権型国家」
 
 民主党は、2005年に『憲法提言』を発表し、具体的条文の提示には至らないが、憲法改正に対する考え方をあらわしている。その第4章は、「多様性に満ちた分権社会の実現に向けて」と小見出しが付けられ、単一国家を前提としながらも、分権型国家への転換の必要性を述べている。すなわち、補完性の原理に基づいて、基礎自治体、広域自治体の権限配分・役割分担を憲法上明確にするとともに、課税自主権・財政自治権を含め自治体の組織および運営、自治体が主体となって実施する事務については、自治体に立法権限を保障し、中央政府にはそれらの分野には大綱的な基準を定める立法のみを許すなど、自民党よりかなり踏み込んだ内容になっている。
 
 以下、国民投票法改正案を共同提出した8党の、地方自治に対する姿勢は次の通りである。
 
【日本維新の会】:地方の条例制定権の自立(上書き権を認める)
【みんなの党】:地域主権型道州制(道州制)の導入、中央・地方の役割分担の明確化、自治立法権、道州・基礎自治体の課税自主権。住民参加などが保障された地域政府の確立
【結の党】:市町村本位の道州制移行で権限・財源を移譲
【生活の党】:中央・地方の役割分担の明確化、上書き権の検討。地方自治体の課税権明記
【新党改革】:中央集権国家から地方分権国家へと「廃藩置州」
 
 このうち、維新、生活の2党は憲法改正を念頭に置いているようだが、改正案の具体化までには及んでいない。また、みんな、結、新党改革については、それらの改革を憲法改正によって行うのか否かについて明確な方針が示されているわけではない。自公民を含め全体を見渡すと、地方自治の強化については、(1)中央・地方の権限・役割分担の明確化、(2)地方自治体の上書き権、(3)道州制の導入、が論点として示されているものの、それらを憲法改正によって実施するのか、あるいは現行憲法の枠内で立法措置で実施するのかについて、共通した認識が存在するわけではないし、党によってはそこまでの検討すら行っていないことがわかる。

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