よりよき「国づくり」という観点から憲法の見直しを―与野党憲法改正案を比較する―

政策シンクタンクPHP総研 研究主幹 永久寿夫

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いまも色あせない改正の論点とは
 
 政策シンクタンクPHP総研は、ちょうど10年前の2004年、「国のあるべき姿」を憲法レベルで描いてみようという試みで、『二十一世紀日本国憲法私案』をまとめた。発表当時、現実の政治状況を考慮しない理念型であり、非現実的であるというご批判をいただいたように、さらなる検討が必要と自覚している部分も少なくない。
 
 しかしながら、そこで示した論点は、現在でも色あせているとは思わない。むしろ、社会状況や国際環境の変化は、当時の問題意識をさらに強くさせている。主な論点を示せば、(1)地方自治の強化、(2)首相の権限の強化、(3)安全保障の強化、である。これらの論点は、同時期に発表された『憲法改正 読売試案2004』(読売新聞)や『憲法改正試案』(世界平和研究所)にも共有されているばかりか、近年発表された民間の提言である『日本国憲法草案』(2012年、日本青年会議所)や「国民の憲法」要綱(2013年、産経新聞)もまた、立場は異なるものの、やはり同様の論点に注目した内容になっている。
 
   もちろん、このほかにも論点は多数あり、各提言における重点の置き方もそれぞれ異なる。しかし、いずれの提言にも共有されるこれらの論点は、今後の憲法改正論議においても避けては通れないものになるはずである。この3つの論点について、各党の姿勢を比較しながら、憲法改正への方向性を検討をしてみよう。

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